記事要約
金利上昇局面では、返済中の住宅ローンこそ「現状把握」が第一歩です。
返済予定表で見直しタイミングを確認したうえで、借換(フラット35)による固定化の考え方と注意点を解説します。
繰上げ返済は手元資金とのバランスが重要。状況別に、取り得る選択肢をまとめました。
日銀による政策金利引き上げ
2025年12月19日に開かれた金融政策決定会合において、政策金利が0.25ポイント引き上げられ、0.75%程度となることが発表されました。
金利の引き上げは、過度なインフレによる物価上昇を抑える効果が期待される一方で、住宅ローン金利の上昇につながる可能性もあるため、一般家庭にとっても無視できない関心事といえます。
前回の「新規で住宅ローンを借りる方」向けに書いた記事に引き続き、「すでに変動金利や期間固定金利で住宅ローンを借りている方」向けに対策方法をご提案いたします。
前回記事
▶金利上昇時代の住宅ローン選び|固定・変動はどう判断する?FPが解説
出典
▶日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2025年12月19日)」PDF
Q1. 政策金利が上がると、住宅ローン金利も必ず上がりますか?
Q2. まず何を確認すればいいですか?
Q3. 金利見直しはいつ反映されますか?
Q4. 借換えはどんな人ほどメリットが出やすいですか?
Q5. フラット35へ借換える一番のメリットは?
Q6. シミュレーションの結果はそのまま当てはまりますか?
Q7. 繰上げ返済はした方がいいですか?
Q8. 繰上げ返済をしない場合、余剰資金はどう考えればいいですか?
Q9. 返済が厳しくなりそうなときは何から着手すべき?
Q10. 家計診断で何が分かりますか?
まずは住宅ローンの現状把握が大切
日銀による政策金利の引上げで、変動金利や固定期間満了後の更新金利が上がることが濃厚ですが、住宅ローン金利は即座に上がるわけではありません。
多くの金融機関の金利見直しは年2回(4月・10月)に行われます。
また、多くの金融機関で変動金利の場合は毎月の支払額は5年間変わりません。
そのため、金利が上がる情報が入った場合でも、落ち着いて対処することが肝心です。
金利上昇対策をする際に初めにやることは、「住宅ローンの現状把握」です。
現時点での
- 借入残高
- 借入残存期間
- 次の返済額見直し時期(変動金利の場合)
- 固定期間満了時期(期間固定型金利の場合)
を、住宅ローン借入時や定期的に金融機関から送られてくる「返済予定表」から確認しましょう。
住宅ローン借換えの検討
金利上昇局面では変動金利や期間固定金利からフラット35への借換も有効な手立てとなります。
ただし、借換には借換手数料や抵当権再設定などの費用が掛かるため、借入残高や残存期間によっては赤字になる場合もあります。
※金利が固定される安心感を得られるため、赤字が一概に悪いとも言えません。
また、フラット35では、借換期間15年~20年、21年~35年で金利が変わることも考慮が必要です。
一般的に借換を行う場合は、
- 借入残高が大きい
- 借入期間が長い
- 金利差が大きい
ほど、効果が大きくなります。
フラット35借換シミュレーション
シミュレーションの前提条件
- 借換額、借換期間は100万円/年とする
- 変動金利は当初1.2% 年2回0.25%ずつ上昇し、最終2.45%まで上昇
- 金利は、借換期間15年~20年:1.71% 21年~35年:2.08%(共に団信込み、参考SBI ARUHI様2026年1月実行金利)
- 借換手数料:借入金額の2.2%(最低22万円)
- 抵当権再設定費用 既存抵当権抹消:1.5万円・抵当権再設定:借入金額の0.4%(登録免許税)+5万円(司法書士報酬)
見方:「費用込み損益」がプラスなら、諸費用を含めても借換メリットが上回る想定です。
| 借換額(万円) | 残存年数(年) | 費用込み損益(万円) |
|---|---|---|
| 1500 | 15 | 23.8 |
| 1600 | 16 | 33.3 |
| 1700 | 17 | 43.8 |
| 1800 | 18 | 55.4 |
| 1900 | 19 | 68.1 |
| 2000 | 20 | 81.8 |
| 2100 | 21 | 4.1 |
| 2200 | 22 | 10.5 |
| 2300 | 23 | 17.5 |
| 2400 | 24 | 25.2 |
| 2500 | 25 | 33.5 |
| 2600 | 26 | 42.5 |
| 2700 | 27 | 52.1 |
| 2800 | 28 | 62.4 |
| 2900 | 29 | 73.4 |
| 3000 | 30 | 85.1 |
※日銀による中立金利(景気を冷やしも熱しもしない金利)を2.0%と想定した場合において、即座に借換を行った場合。
※実際の政策金利が2.0%を超えた場合は借換効果が上昇し、2.0%を超えない場合は借換損が生じる可能性があります。
※実際の融資手数料は金融機関・抵当権設定登記費用は司法書士により異なります。
※フラット35(買取型)の借換は、印紙税・適合証明(物件検査)費用・借換元の繰上返済手数料等の諸費用が別途発生します。
出典
シミュレーション結果の概要
上記のシミュレーションにおいては、借入金額や期間がどのパターンでも借換による費用込み損益がプラスとなりました。
ただし、21年目においては借換金利が変わるため軽減効果は大きく減少します。
このタイミングであれば1年待って借換を行うなどの対策が必要と考えられます。
実際は、各家庭における現時点での住宅ローンの状況などにより結果が変わりますので、個別に検討が必要となります。
また、変動金利と固定金利のどちらが合うかは、家族構成や今後のライフイベント(教育費・転職・住み替え等)によっても左右されます。
目先の利払い(損得)だけで判断せず、家計全体の見通しで考えることが重要です。
繰上げ返済の検討
家計の余剰資力によっては、繰上げ返済も検討材料となりますが、基本的にはおすすめいたしません。
金利上昇局面とは言え、ローンの中でも金利の低い部類に入る住宅ローンでは繰上げ返済の効果が小さく、余剰資力を保有する安心感が薄れてしまい、突発的な出費に対応できなくなるからです。
<例>住宅ローンを繰上げ返済し、自動車をローンで購入する。
一部繰上げ返済の効果
仮に残存期間30年・残債額3,000万円・金利1.2%の方が100万円の繰上げ返済をするとします。
一部繰上げ返済による効果は、
- 利息軽減額:約41万円
- 期限短縮:14ヶ月(残り28年10ヶ月)
となります。
ただし、利息軽減効果は繰上げ返済を行った直後に恩恵が得られるのではなく、住宅ローン完済時に結果として利息が軽減されたことになります。
このケースを100万円に対する年間利回りとして計算すると、約1.2%/年ほどにしかなりません。
この程度の利息軽減効果であれば、手持ち資金を減らしてまで繰上げ返済を行うのは慎重になる必要があります。
繰上げ返済のデメリット
- 余剰資力低下による家計耐久力の減少
- 借入期間短縮によって団体信用生命保険加入期間が減少
金利上昇局面における余剰資金の運用
金利上昇局面においては、借入金利の利率上昇というデメリットだけではなく、資産運用利回りの上昇というメリットもあります。
例として、個人向け国債変動10年の年利率は、2020年12月発行時点で0.05%が、2025年12月募集債で1.23%(共に税引き前)と、1.18%も上昇しております。
余剰資力を繰上げ返済に回さず、個人向け国債やNISAでバランス型投信を積み立てるなど、換金性があり比較的リスクも小さい銘柄にバランスよく運用することで、いざという時の資力を担保しつつ、住宅ローン金利を相殺することで、繰上げ返済に近い利息軽減効果(運用利回りによってはローン金利を上回ることも)が得られます。
出典
現時点で余剰資力が少ない場合
現時点での家計収支が±0、または赤字で、貯蓄もほぼないような場合、支出全体の見直しが必要です。
特に返済額の変更時期が間近に迫っているような場合は、急いで対応が必要となります。
冒頭に記載の通り、まずはご自身のローン状況把握が大切です。
返済額の変更がいつ行われ、いくらになるのかを確認し、最低でも支払い上昇分の支出を減らさなければなりません。
所得の上昇が見込めない、支出の削減も限界という状況になれば、残念ながら自宅の売却も視野に入れて動く必要が出てきます。
家計診断の必要性
当店では他社で購入し住宅ローンをご返済中の方でも家計診断を行っております(当店からご購入の方は無料、他店で購入の方は税込5、500円(八戸市周辺に限る))。
現時点での家計診断と借換や繰上げ返済効果の計算を行い、報告書を作成いたします。
また、家計診断の結果、ご自宅の売却に移行するような場合は無料とさせていただきます。
関連リンク
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まとめ
- 金利上昇局面では、まず返済予定表で現状把握を行い、影響が出るタイミングを確認することが重要です。
- そのうえで、借換(固定化)・繰上げ返済・余剰資金の置き方を家計状況に合わせて検討しましょう。
- 判断が難しい場合は、家計診断で数字に落としてから意思決定すると安心です。
この記事を書いた人
佐々木 大地(宅地建物取引士・AFP〈日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー〉・住宅ローンアドバイザー)
青森県八戸市を拠点に、不動産売買・相続相談をサポートしています。
宅建士・FP資格を活かし、住宅購入・売却に伴う家計診断やキャッシュフローシミュレーションまでトータルでご提案。
地域密着の視点から、初めての不動産取引でも安心してご相談いただけるパートナーを目指しています。







