【経産省が正式定義】2027年4月から適用「GX ZEH」とは?ZEHとの違いや光熱費・建築費への影響をFPが解説
2025年4月以降、新築住宅には「平成28年省エネ基準」への適合が義務化されました。
さらに2030年を見据え、現行ZEH水準の義務化が検討される中、強化基準である「GX ZEH」が注目されています。
経済産業省は2025年9月26日、2027年4月より現行のZEH(ゼロエネルギーハウス)基準を引き上げ、新たにGX ZEH(グリーントランスフォーメーション・ゼロエネルギーハウス)および集合住宅版のGX ZEH-Mを定義しました。
2027年4月から適用予定のこの新基準は、現行ZEHを上回る断熱・省エネ性能を求めるものです。
本記事では、GX ZEHの概要、ZEHとの違い、そして光熱費や建築費への影響をFP目線でわかりやすく解説します。
2025年9月26日に新定義「GX ZEH」「GX ZEH-M」とは?
経済産業省は2027年4月より、現行のZEH(ゼロエネルギーハウス)基準を引き上げ、新たにGX ZEH(グリーントランスフォーメーション・ゼロエネルギーハウス)と呼ばれる強化基準の導入を行います。
なお、現行のZEH基準の新規取得は2028年3月までと予定されています。
ZEHとGX ZEHの違いとは?
現行ZEHの基準
- 断熱等性能等級5
- 一次エネルギー消費量:省エネ基準比20%削減
- 再エネ含む一次エネルギー消費量:100%削減
- 太陽光発電などで一次エネルギー収支を実質ゼロ
GX ZEH(経済産業省 2025年9月26日発表)の基準
- 断熱等性能等級6(1段階引き上げ)
- 一次エネルギー消費量:省エネ基準比35%削減
- 再エネを含む一次エネルギー消費量:100%~115%削減(115%以上はGX ZEH+)
- 蓄電池とHEMS※の導入が必須
※HEMS(ヘムス)= ホームエネルギーマネージメントシステム。家庭内で使われる電気をモニターで「見える化」し、家電の電気使用量を制御する仕組み。
GX ZEHでは、より高い断熱性能と省エネ性能が求められるほか、エネルギーを賢く使う仕組みも必須となりました。
そもそも一次エネルギーとは?
「ZEHにすれば電気代がかからなくなるのでは?」といったご質問をいただくことがあります。一次エネルギーとは、省エネ住宅で対象とされる消費エネルギーのうち以下の4項目です。
- 冷暖房
- 給湯
- 換気
- 照明
テレビや冷蔵庫、洗濯機などの一般家電は含まれません。ZEHが目指す「ゼロエネルギー」とは、この一次エネルギー分を太陽光発電などで相殺することを意味します。したがって一般家電の電気料金は引き続き発生します。
補助金制度への影響と注目の動向
2025年4月以降、新築住宅では「平成28年省エネ基準」への適合が義務化されています。さらに2030年度からは、現行ZEH水準の達成が新築住宅の基本要件となる方向で検討されています。
この流れに伴い、ZEH水準住宅への補助金は段階的に減額されてきており、今後も縮小や終了の可能性があります。
一方で、2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」では、新たに「GX志向型住宅枠」が設けられました(制度内容は年度ごとに変更される可能性があります)。補助額は最大160万円と大きく、注目を集めました。
※新築・GX志向型住宅については2025年7月22日に予算上限額に達したため申請終了となりました。
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ZEH・GX ZEHで本当に光熱費は下がるのか?
国土交通省の試算によると、地域ごとの年間平均光熱費は以下のように変化します。
上表のとおり、6地域では年間で約86,000円、2地域では年間で約186,000円もの光熱費削減効果があり、地域が寒冷になるほど削減効果は大きくなる傾向があります。
※八戸市は3地域に該当
※実際の削減額は世帯人数・居住地域・生活スタイル等によって変動します
出典:国土交通省「年間の光熱費も節約できる!|経済的にオトクに!」
GX ZEHでは、ZEH以上の断熱性能・省エネ性能により一次エネルギー消費量を35%以上削減することが求められるため、これ以上の光熱費削減効果が期待できます。
「再エネで相殺されるなら、省エネ性能の違いは意味がないのでは?」と思うかもしれません。しかし、省エネ性能が高ければ必要な再エネ設備の容量を抑えることができ、同じ容量を導入した場合でも余剰電力を自家消費に回すことができ、光熱費削減につながります。
また、再エネ設備の無い「ZEH水準住宅」でも、国土交通省の試算によれば、6地域で年間約46,000円、2地域で年間約96,000円の光熱費削減効果が示されています。
なお、これらの国土交通省の試算は令和3年3月時点の電気料金・ガス料金などの小売平均単価をもとに算出されています。近年はエネルギー価格が上昇傾向にあるため、実際の削減効果はさらに大きくなる可能性があります。
GX ZEH対応の建築費は?
GX ZEHに対応するには、高断熱材・高断熱サッシ・高効率設備のほか、蓄電池やHEMSの設置も必要になります。そのため建築費は現行ZEHより上昇する見込みです。
- 追加される建築費用の目安
- 太陽光発電・蓄電池など再エネ設備の定期的なメンテナンス費用
- 受けられる補助金の金額
- 光熱費削減効果
これらの費用対効果を考慮し、初期費用の回収可能性や将来的な家計負担を総合的に検討することが大切です。
注: GX ZEHの定義は確定しましたが、実際の建築コストは今後の市場価格や設備仕様により変動します。市中の情報としては「おおむね1割程度のコスト増」という見方も見られますが、採用する断熱性能や設備仕様(窓性能・断熱厚み・太陽光発電など再エネ設備の発電容量など)によって大きく変動する可能性があります。
よくある質問(Q&A)
Q. GX ZEHとZEH、どちらを選ぶべきですか?
A. 初期費用を抑えたいならZEH、将来の省エネ性能や光熱費削減を重視するならGX ZEHが有利です。再エネ設備導入コストとの兼ね合い次第では「ZEH水準」も十分に検討に値します。ただし、住宅性能により補助金の額も変わりますのでそこもご注意ください。
Q. GX ZEHの補助金は今後も続きますか?
A. 補助金は年度ごとに変更されます。現在の枠も予算上限に達し次第終了するため、早めの行動が大切です。
Q. GX ZEHを建てるには何を準備すれば良いですか?
A. GX ZEHに対応した住宅会社を選び、省エネ計算や補助金申請を設計段階から進めることが重要です。
参考資料:最新の定義・基準値は下記の経済産業省公式資料にて確認できます。
経済産業省「GX ZEH・GX ZEH-M の定義について」(2025年9月26日)
同・詳細資料(PDF)