住宅購入はゴールじゃない!修繕費が家計に与える影響とは?不動産FPが徹底解説
2025年5月9日付の日経新聞「戸建て修繕、30年で平均615万円 いつ・どこを?資金計画もFPが指南」では、戸建住宅における長期的な修繕費の実態が取り上げられました。このブログでは、住宅購入時に修繕費用も見据えた資金計画の重要性について、不動産FPの視点から解説します。
八戸市でマイホームを検討している方も、修繕費を含めた資金計画が重要です。将来にわたって安心できる住まいの維持には、事前の備えが欠かせません。
出典:日本経済新聞「戸建て修繕、30年で平均615万円 いつ・どこを?資金計画もFPが指南」
住宅購入時に見落とされがちな「修繕費用」
多くの方は住宅ローンの金利や毎月の返済額に注目しますが、住宅は「購入して終わり」ではなく、住み続けるためにはさまざまな維持管理費がかかります。
賃貸住宅では修繕費用を大家さんが負担しますが、持ち家では当然ながら自己負担となります。ローンの支払いが家賃と同じくらいだから大丈夫、と安心していると、後から大きな出費に直面することも。
平均でどれくらいかかる?戸建て住宅の修繕費
アットホーム株式会社は2023年に、築30年以上の戸建住宅に住む50歳以上の332名を対象に、修繕に関するアンケート調査を実施しました。
その結果、木造住宅に住む回答者の平均築年数は38年、修繕費用の合計は平均629万円にのぼるとのことです。主な修繕内容と1回目の修繕時期および費用平均は以下の通りです。
修繕場所 | 修繕経験者割合 | 1回目修繕時の築年数 | 1回目修繕時の費用平均 |
---|---|---|---|
外壁 | 79.2% | 18.8年 | 100.7万円 |
トイレ | 75.4% | 22.0年 | 30.6万円 |
屋根 | 73.6% | 21.7年 | 92.7万円 |
給湯器 | 73.0% | 16.7年 | 28.8万円 |
浴室 | 58.8% | 22.7年 | 82.9万円 |
出典:アットホーム株式会社 2023年『一戸建て修繕』の実態調査
2023年時点で30年以上居住という条件を考えると、浴室のリフォームはタイル風呂からユニットバスへの交換が多いものと推測されます。すでにユニットバスであれば、混合栓やシャワー部分だけ交換するケースも多く安価に済みます。
また、トイレで故障が多いのは洗浄便座部分です。一体型トイレの場合、洗浄便座が壊れると便器ごと交換になることもあるため、修繕費を抑えるには、便座だけ交換可能なタンク・便器・便座の3点式を選ぶ方が安心です。
これから住宅を取得する方は、住宅性能評価において「維持管理・更新への配慮に関すること」といった項目が設けられており、給排水管などの維持管理を容易にする工夫が評価されます。
建物の建築時や建売住宅の購入時には、将来の修繕費を抑えるために、維持管理や劣化対策がどのように講じられているかを確認しておくことをおすすめします。
修繕をしないとどうなるか?
修繕を怠ることで特に影響が大きいのが屋根と外壁です。防水・耐候性能が落ちると、雨漏りや浸水によって断熱材の損傷や構造材が腐食し、建物の寿命を縮める原因になります。また、劣化を放置すると壁内のカビの発生、木部の腐食によるシロアリ被害が発生するケースもあります。
また、給湯器やエアコン、コンロなどの調理器具といった住宅設備が故障した場合、当然ながら不便さを強いられます。
修繕費をどう見積もり、準備するか
修繕費は毎年発生するものではありませんが、概ね築15〜20年で大きな修繕のタイミングが訪れます。
平均修繕費629万円を38年で割ると、年間約16.6万円(月あたり約14,000円)の積立が目安です。ただし、インフレや資材高騰を見込んで多めに積立するのが理想です。
いざというとき困らないよう、安全性と流動性のバランスを取った資産運用が重要です。
積立預金をベースにしつつ、NISAでのバランス型投資信託積立など、無理のない範囲での分散も効果的です。
▶【補足解説】修繕費はどれくらい?50年でかかる費用と積立額を具体試算!
積立が間に合わないとどうなる?
修繕資金が不足した場合、リフォームローンを検討することになりますが、住宅ローンより金利が高く、住宅ローンとリフォームローンの2本立ての返済で家計負担が増す恐れがあります。
また、60歳以上の方向けには住宅金融支援機構の「リフォーム融資(高齢者向け返済特例)」があり、バリアフリー工事やヒートショック対策など工事内容は限られますが、存命中は利息分のみを支払い、お亡くなりになった後に住宅を売却して返済できる制度もあります。
補助金制度の活用も視野に
給湯器交換や断熱サッシなどのリフォームには、国の補助金が使えるケースもあります。年度ごとの予算上限や登録事業者による申請が必要なため、事前確認が重要です。
まとめ|住宅購入は「支払い計画」+「維持計画」で
住宅購入時に住宅ローンの返済計画だけでなく、将来の修繕費を含めたキャッシュフロー全体を設計することが大切です。不安のない住まい選びのためにも、長期的な視点で備えておきましょう。
この記事を書いた人
佐々木 大地(宅地建物取引士・AFP〈日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー〉・住宅ローンアドバイザー)
青森県八戸市を拠点に、不動産売買・相続相談をサポートしています。
宅建士・FP資格を活かし、住宅購入・売却に伴う家計診断やキャッシュフローシミュレーションまでトータルでご提案。
地域密着の視点から、初めての不動産取引でも安心してご相談いただけるパートナーを目指しています。