公開日:2025/05/02
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相続した実家、どうする?空き家売却入門ガイド(第2回)
相続した実家、売る?貸す?そのまま? 空き家の活用方法をプロが解説
第1回では、相続発生から遺産分割協議、相続不動産の相続登記までの流れをご紹介しました。
第2回では、相続によって空き家になった実家をどのように活用するかについて解説します。
相続した不動産の活用方法は、遺産分割協議の内容にも大きく関わってきます。
特に実家などの空き家については、今後どうするのかを考えることが重要です。
活用方法としては、主に次の3つが考えられます。
- そのままにする
- 貸す
- 売る
それでは、それぞれのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
① そのままにする
空き家をそのまま放置した場合、空気の入れ替えや掃除が行われないことで、建物の劣化が想像以上に早まります。
また、訪れる頻度が少ないと故障などに気づくのが遅れ、修繕費が高額になることもあります。
さらに、雑草の繁茂や建物の損傷などが原因で、ご近所に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
このような理由から、空き家のまま維持することはあまり得策とはいえません。
ただし、相続人の誰かが住む予定がある場合は、良い選択肢となります。
この場合の遺産分割方法としては次の2つが考えられます。
- 居住する相続人が土地・建物を相続し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」
- 複数の相続人が共有持ち分で所有する「共有分割」にして、居住する相続人が他の相続人に家賃相当額を支払う方法
誰も住まないまま空き家を維持するのはおすすめできませんので、貸すか売るかの選択を考えるケースが多くなります。
② 貸す
空き家となった建物を賃貸し、家賃収入を得る方法です。
この場合の遺産分割方法としては次の2つがあります。
- 相続人の一人が相続し、家賃収入を単独で得る「代償分割」
- 「共有分割」で持ち分割合に応じて家賃を分け合う方法
ただし、賃貸の場合は相続した建物が古いケースが多く、今後の維持管理費用がかかる可能性があります。
また、借主に責任がない故障などの修繕は貸主の負担となります。
賃料設定と維持管理費用のバランスが悪いと赤字になることもありますので、賃貸を検討する際は、建物の状況や賃料設定について不動産業者などの専門家に相談することをおすすめします。
③ 売る
相続した不動産を売却する場合、次のような方法で遺産分割が行われます。
- 「共有分割」で相続人全員が売主となり、売却代金を共有者で分ける方法
- 相続人の一人が相続し、売却後に売上代金を持ち分割合で分配する「換価分割」という方法
相続人の一部が遠方に住んでいるケースでは、売却手続きに関するやり取りや契約などの事務手続きが大きな負担になることもあります。
特に八戸市のように、ご実家は地元でも相続人は関東圏や都市部に住んでいるというケースは少なくありません。
こうした場合、換価分割により一人の相続人が土地・建物を相続して売却を進め、売却後に現金を相続人間で分配する方法が、手続き面でも非常にスムーズで選ばれることが多くなっています。
売却時の注意点
不動産を売却した際、売買代金から、土地建物を購入したときの代金(取得費)や、売却した際の仲介手数料や測量費用・解体費用など(譲渡費)といった必要経費を控除して利益が生じた場合、譲渡所得税が課せられます。
実務として良くあるのが購入した当時の売買契約書などの資料が見当たらず、取得費が分からないといったケースです。
土地や建物の購入時の資料がない場合、取得費が不明となり、概算取得費として「売買代金の5%」しか見てもらえないため、譲渡所得税が高額になる可能性があります。
【計算例】
売却価格 − 概算取得費(売却価格の5%) − 譲渡費用(仲介手数料など) = 譲渡所得
譲渡所得 × 20.315%(5年超所有の場合) = 不動産譲渡税
例えば、売却価格2000万円・譲渡費用100万円の場合:
(2000万円 − 100万円 − 100万円) × 20.315% ≒ 約366万円
このように取得費不明の場合は課税額が増えるため、空き家整理中に資料が出てきた場合は必ず保管しましょう。
また、昭和56年5月31日以前に建築された住宅などで要件を満たす場合、譲渡所得から3000万円の特別控除を受けられる可能性もあります。
ただし、売却前に居住や賃貸してしまうと特例が適用できなくなるため注意が必要です。
まとめ
相続した実家の活用方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。
空き家をそのままにする、貸す、売る──どの方法を選ぶかは状況によって異なりますが、将来的な負担や相続人間の話し合いを考えると、売却を選択する方も増えています。
相続した実家を売却する際の流れや注意点については、【第3回 空き家売却ガイド】相続した実家を売却する方法と流れ|売り出し前の準備・手続き・注意点で詳しくご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
この記事を書いた人
佐々木 大地(宅地建物取引士・AFP〈日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー〉・住宅ローンアドバイザー)
青森県八戸市を拠点に、不動産売買・相続相談をサポートしています。
宅建士・FP資格を活かし、住宅購入・売却に伴う家計診断やキャッシュフローシミュレーションまでトータルでご提案。
地域密着の視点から、初めての不動産取引でも安心してご相談いただけるパートナーを目指しています。